スイスの車窓から3(ユングフラウ鉄道を旅する)
 前回の記事(スイスの車窓から2(ヴェンゲルンアルプ鉄道を旅する))の続きです。スイス中部にあるオーバーラント三山を見渡せる峠の駅、クライネ・シャイデックで昼食を取り、いよいよヨーロッパ最高地点の駅を目指します。

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EOS 5D MarkII + EF24-70mm F2.8 L USM ユングフラウ鉄道 クライネ・シャイデック駅付近

 クライネ・シャイデック駅から、名峰ユングフラウの中腹に造られたユングフラウヨッホ駅まで、ユングフラウ鉄道という登山鉄道が伸びています。この鉄道はおよそ9キロの距離しかないのですが、標高約2000メートルの地点から、約3500メートルの地点まで登ってしまいます。日本で普通に登山の対象となるような山の上から、一気に富士山の山頂近くまで登ってしまうわけですから、とんでもない登山鉄道だということがお分かり頂けるかと思います。

 ユングフラウヨッホ駅が完成し、全線が開通したのは1912年8月のこと。この写真を撮影したのは、まさにその100年後の2012年8月のことでした。

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クライネ・シャイデック駅

 時計メーカーのティソ(TISSOT)が全線開通100周年の公式スポンサーだそうです。100周年記念ウォッチが描かれているラッピング車両もクライネ・シャイデック駅で見ることができました。鉄道の○○年記念イベントを鉄道会社以外の会社が抱え持つというのは、日本ではあまり見られない光景ですね。

 ティソはスウォッチグループの傘下にあるブランドです。国際的な企業だからこそできるマーティング手法とも言えます。


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クライネ・シャイデック駅(ヴェンゲルアルプ鉄道車両)

 スイスの鉄道駅では、有名な時計メーカーや宝飾品メーカーが看板を設置していることが多く、日本の鉄道駅とはかなり違った趣きでした。さすが世界から観光客を集める登山鉄道は雰囲気が違います。そしてオシャレです。

 このクライネ・シャイデック駅から更なる列車の旅がはじまります。


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クライネ・シャイデック駅

 車両の中は混み合っており、席を探し出すのもやっという状況です。出入口近くに補助席を見つけることができました。

 駅のホームは右に大きくカーブを取っており、平地が極めて限られている場所であることを物語っています。アイガー北壁初登頂を目指したクライマー達も宿泊したという歴史あるホテルの前を通り、間近にそびえ立つユングフラウを目指します。


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 穏やかな斜面を列車は進んでいきます。線路のすぐ脇を牛たちが休んでいます。絶景を目の前にしたのんびりした光景は、なんとも気持ちの良いものです。乗客の皆さんもカメラ片手に興奮している様子ですね。


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 ということでお気に入りの牛写真を一枚(笑) さすがに車窓ではなく、クライネ・シャイデック駅で下車したときの一枚です。唐突にスイマセン。


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 線路の脇にはハイキングコースが見えます。断崖絶壁の山へ向けて進んでいく方も多いです。ユングフラウヨッホからの帰りに、クライネ・シャイデック駅の一つ手前のアイガーグレッチャー駅で下車し、クライネ・シャイデック駅まで徒歩でハイキングを楽しむのもおすすめです。このコースはユングフラウ鉄道全線開通100周年を記念して「アイガー・ウォーク」という名前で整備されています。


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クライネ・シャイデック駅~アイガーグレッチャー駅間

 オーバーラント三山の前に広がる谷はラウターブルンネンのある谷につながり、その谷の向こう側には小さな村・ミューレンが見えます。足下には美しい花が咲き、遠近感のある広がりのある眺めに、どこからでも写真を撮りたくなることでしょう。鉄道と絡めても良し。山だけ切り取っても良し。花を中心に撮影しても良し。なんでもありのハイキングコースですね。

 クライネ・シャイデック駅とアイガーグレッチャー駅の間には、スキーシーズンの人工雪のために造られたダム湖・ファルボーデン湖(ファルボーデンゼー / Fallbodensee)があり、逆さアイガーを撮影することができます。車窓からはいいアングルで撮れませんので、ここはハイキングしながら楽しんでみてはいかがでしょうか。



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アイガーグレッチャー駅

 ユングフラウ鉄道の後半はほとんどがトンネルの中です。のぞき窓のある場所に駅があるだけなので、車窓はほとんど楽しめません。トンネルの入口にあるのがこのアイガーグレッチャー駅です。

 アイガーグレッチャー駅にはレストランがあり、駅の名前の由来であるアイガー氷河を眺めることができます。駅にはユングフラウ鉄道が経営する宿泊施設(ゲストハウス)もオープンしているそうです。鉄道職員のための寮だったものを改造したものだそうで、中はなかなか無骨なようですが、それはそれで興味深いですね。職員の方がご飯を食べに来ることもあるそうです。


 列車はいよいよトンネルに入ります。

 長い長いトンネルの中で、熟睡しているうちに聞き覚えのある声が……。

 「アルプスの少女 ハイジ」のハイジの声です。もちろん日本語です。車両の中にはモニタが多数設置されており、日本の通勤電車よりも多いのではないかと思うほどの密度です。その画面には見覚えのあるハイジの姿が映っているではありませんか!

 「まもなく終点です」という日本語の声が、ほとんどヨーロッパ系の人しか乗っていない車両に鳴り響いています。日本人なら笑ってしまう光景です。

 実はこれ、ユングフラウ鉄道全線開通100周年を記念し、2011年から2012年末までの期間限定ということで、行われていたキャンペーンだったそうです。
 

 アニメーションの絵を使ったキャンペーンは終わってしまったようですが、通常版の日本語アナウンスに今も使われている説がありますので要注意です(笑)

 そしてハイジも言うように終着点に到着します。


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ユングフラウヨッホ駅

 ユングフラウの山の中、ヨーロッパ最高地点の駅(3,454メートル)であるユングフラウヨッホ駅に到着します。岩盤を掘り抜いた荒々しい壁がただの地下駅でないことを教えてくれます。そして、岩からしみ出すようなひんやりとした空気が緊張感を高めます。

 近年は列車の本数が増え、こちらのホームとは別にもう1面1線のホームが増設されている忙しい駅でもあるようです。往来する人をかき分けながら案内板に従って進みます。

 この駅には大型のエレベーターが設置されており、一気に展望台まで登れます。

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ユングフラウヨッホ展望台・アレッチ氷河


 展望台から足を踏み出すと、そこは厳寒の世界が広がっています。真夏であるにも関わらず、冷たい風が顔を突き刺します。しかしその向こうには、ヨーロッパにいるとは思えない巨大な氷河が広がっていたのです。

 アレッチ氷河は世界自然遺産にも指定されているヨーロッパ最長(約23キロ)の氷河です。真っ白な氷雪と黒々とした岩山のコントラストは見る者を圧倒します。夏らしい、質感のある雲との組み合わせが何ともファンタジックな印象がしてきます。ヨーロッパの真ん中にこんなに豊かな自然が広がっていることに驚いてしまいます。

 100年前に大変な努力をして鉄道を切り開いたのは、この美しい光景を多くの人に見せたいと思う人が大勢いたからだと思います。その想いを裏切らない光景が広がっていました。



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by vivid_bit | 2014-07-13 12:56 | EF24-70mm L USM
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