ちょっと古い話になってしまいましたが、世紀の天体イベントであった皆既日食での思い出をしばし。
実のところ、父親が中国の現地工場をを取り仕切っている関係で、両親とも中国の皆既日食帯に住んでいます。お宅訪問=皆既日食観察もできるというなんとも気楽な旅行ということで、悪石島に行かれた方には申し訳ない気持ちですね……。
ということで両親の住む蘇州(上海から車で1時間ほどの大都市)にしばらく滞在し、いよいよ出発。現地ツアーのはじまりです。
今回利用したのは蘇州滞在の日本人駐在員やその家族を対象にした現地発ツアーで、海外の天文学者が世界でも最も良好な観測地であるとした、浙江省湖州市安吉県天荒坪ダムで見るプランです。中国は平地が多いのですが、上海から車で5時間ほど行くと、標高1000メートル台の山地に出くわします。このダムはこの山の頂上を削って作ったものでして、周囲の標高からしてもほぼ最頂点といえるほど高い場所にあります。しかも皆既日食帯の中心に近く、5分以上の継続時間が望めます。

中国の平地部はスモッグが多く、大都市である上海や蘇州では、ろくに太陽の輪郭も見ることができません。青空すら見られないことが多いため、大都市から離れたいい観測地点がないものかと思っていたのですが、このプランは絶妙な場所ですし、「これなら」と飛びついたわけです。
蘇州の自宅を出発したのは午前3時35分。集合地点となる最寄りのホテルまで向かった訳ですが、撮影機材が重い……。予定より早く全員が集合し、午前3時55分には一路現地へ向けてバスは出発しました。
旅程の大半は高速道路で移動できるとはいえ、そこは中国、スケールが違います。高速道路を下りて、現地の安吉市に入ったのは午前7時半。ずい分時間がかかりました。
安吉市の南部へ進むとバスの脇を警察車両が何台も追い越します。徐々に不穏な雰囲気となってきましたが、沿道には日食グラスを手にした子供たちが家の前で腰かけている風景が見られるようになり、徐々にお祭りの雰囲気が漂い始めましています。と、思っているといきなりバスは停車。なんと警察が検問を行っているようです。

この天荒坪ダムに多くの人が殺到することを警戒し、警察が封鎖線を張っているのです。この封鎖線は何重にも設けられており、観光ツアーとして事前の割り当てを受けている車両以外はすべて止められていました。
上り道の途中では、あと8km、あと5kmという表示がされていたのですが、現地の人々や封鎖線を越えられなかった車がその看板のまわりに陣取り、これまたお祭り騒ぎをしています。

中には徒歩で頂上を目指し歩いている人もいたのですが、この位置から頂上まで標高で800メートルはあったと思うので、多分間に合わなかったでしょうね……。
現地の山は竹林に覆われており、緑一色の世界です。バスは急な勾配を唸りを上げながら登っていきます。

明らかに皆既日食ツアーと思われるバスが数珠つなぎとなってます。目的地はスキー場やロッククライミング施設もある観光地らしく、道はちゃんとした舗装もされており、特に危険は感じませんでした。トンネルは随分と手作り感に満ちていましたが、基本的には工事用道路なのでこんなものでしょう。

この時点で太陽は雲に隠れており、なんとなく明るい曇り空という程度でしかありませんでした。梅雨前線は長江上空にあり、この安吉はやや南に離れているということ、そして日本の気象予報図を見る限り、皆既日食時には梅雨前線が蛇行し、観測地点から離れる方向で動いてくれるであろうことが唯一の救いの材料です。さて晴れてくれるのか……。

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